病院のサイト開設の目的は私の経験上、ほとんどが人材の採用、特に看護師の採用に関するものです。需給のバランス上、看護師の採用はどの病院にとっても難しい状況のようですが、それでも採用が比較的上手く進んでいる病院とそうではないところがあります。そのポイントは何なのでしょうか。またホームページが果たせる役割とは何でしょうか。
私は平成4年から7年まである大企業の人事採用を担当していたことがあります。当時は景気も良く、優秀な人材の獲得には苦労していたことを覚えています。でもそうした状況の中でも企業ができることと言えば、「自社で働くことで、このようなことが実現できる」というワークプランの提示に他ならないのです。当時は待遇面で学生を釣り上げたり、仕事以外の魅力を打ちしだした採用手法も目立ちましたが、結果的にそれらの企業は高い離職率というしっぺ返しを受けていたと思います。
基本的なことではありますが、「この職場ではこのようなことが出来る」、「この仕事をしていると、このようなことが身につく」、「このような人間になれる」、「このようなことが実現できる」ということを丹念に描いていくことしか出来ないのです。それが自社に適した優秀な人材の獲得のために一番の近道なのです。
栗田病院さんでも、職種では精神科医、看護師、准看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士、管理栄養士、臨床心理士と多岐に及ぶ採用を実施していますが、ホームページ企画の基本方針として、「ひとりでも働く職員の生の声、生の姿を掲載していく」ことに定め、徹底して全ページに最低一人のスタッフが仕事、部署を紹介する構成としました。
またより深くひとりの職員の想いや就労の様子を描くために、「働く看護師の一週間」や「作業療法士の一週間」といった密着レポート的な企画を実施しました。若手職員を選抜して頂き、採用の対象となる若年層の方と同じ目線で、「私はこのような理由でこの病院で働いている」、「このようなときが一番充実している」、「やりがいを感じる」、「将来の夢や目標について」などを語ってもらいました。それをインタビュー記事ではなく、一週間の実際の職場での働く様子と交えてコンテンツ化しました。すると、形式的なインタビュー記事と比較して、より臨場感のあるリアルなコンテンツとして対象者に伝わります。
採用面での反響は上々と聞いています。それは、一般企業と同様に、ホームページの肝をコンテンツだと捉え、丹念に取材に協力頂いた病院幹部、スタッフの方々の姿勢が生み出した成果だと考えています。 医療業務に携わる方々は、信念、ポリシーに基づいて職業選択をし業務にあたっているので、彼らを対象としたコンテンツには、やはり「想い」で返してあげなければ効果は薄いのです。
また他の病院とは違って、この病院ではこのようなことが実現できるという「USP=自分たちだけが持つ売り」も一般企業と同様に考えなければいけません。「販売提案」ではなく「自己実現提案」であることだけが一般企業との視点の違いですが、基本発想は同じです。働く方々の満足がサービス向上となり、患者様の満足につながることでしょう。その意味で医療サービスの品質の向上の基本となる人材の採用に戦略的に取り組んだ栗田病院はすべての病院のお手本となる好事例だと思います。